大学院講義



【デジタルアーカイブ原論】
2017年度 学際情報学府 4990300 柳 与志夫

 アナログ情報・デジタル情報が混在する現在、いずれの情報にも目配せをしつつ、デジタル環境を前提に学術研究の成果としての論文を作成しなければならない人文社会科学系の研究者にとって、デジタルアーカイブ構築に関する知識と技術は、論文作成の基礎的な作法として必須のものとなりつつある。
 こうした現状を踏まえ、この授業では、資料調査・収集の方法、引用の際の表記方法、文献目録の作成方法、資料のデジタル化、メタデータ付与、情報検索、情報公開時に考慮すべき倫理や権利処理の問題などのデジタルアーカイブを構成する各要素を、それぞれの専門家による講義によって段階的に理解しながら、同時に履修者個人の学位取得予定論文のテーマに即した実習を行う。
 具体的な作業とその作業の予測される効果について述べる。たとえばレポートや論文作成の際に、誰もがインターネット上の検索エンジンや既存のデータベースにキーワードを入力して資料を検索する。その際、往々にして、インターネット上ですぐに閲覧・入手できる資料のみに頼って、レポートや論文を作成してしまいがちである。しかし、検索から漏れた資料の中に、研究者として見過ごすことのできない価値を有する重要な資料(いまだ紙の形態でしか存在しない資料を含む)が存在する可能性がある。学位取得論文を作成するためには、このような資料をも調査・収集しなければならない。そこで、この授業ではデジタル資料の収集とともに、紙の資料の収集も実践し、その際に問題となる事柄を把握してもらう。結果として、先行研究が見落としていた資料や先行研究の問題点なども指摘できるようになるであろう。
 また、収集した紙の資料にごく簡単なデジタル加工を施し、素朴な形ではあるが、デジタルアーカイブを自分自身で構築してもらうことも予定している。自分の論文テーマに関するデジタルアーカイブを(可能ならば自身の手によって)構築することによって、既存のデジタルアーカイブやデータベースの成り立ちと限界も次第に理解できるようになる。
 さらに、この分野に興味を覚えた履修者に向けて、論文作成のレベルを超えた、我が国のデジタルアーカイブの将来的展開に関する知見を得る機会も設ける。最終的には履修者自身で調査・収集・デジタル化した資料を構造化・可視化して、他者に理解可能な形で発表できる水準に高め、知の共有化を図りたい。